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本日(4月8日)開催予定でした入学式は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により中止しました。
学長および理事長の入学生に向けたメッセージをお届けします。

学長祝辞

新入生を歓迎する

鬼頭宏学長

新入生の皆さん、入学おめでとうございます。
この春、静岡県立大学には学部に648名、短期大学部に121名、大学院に115名が入学しました。本学に諸君をお迎えすることをたいへん嬉しく思っています。
新入生の皆さんはそれぞれに夢や希望を持って入学されたことと思います。すでに明確な目的を持っている人もいるでしょう。あるいは、これからの勉学を通して将来についてじっくり考えようとしている人もいることでしょう。初心を忘れずに、それぞれの希望や目的を達成してください。
あいにく、「新型コロナウイルス感染症」の拡大を防ぐために、本学では入学式を中止せざるをえませんでした。教職員、在校生一同で、期待に胸を弾ませて入学された皆さんをお迎えすることができないことは大変残念です。出鼻をくじかれた思いの諸君もいるかと思います。県民の健康、安全、福祉を支える人材を育成することを使命としている本学が、世界を揺るがすパンデミックの襲来に対しては、慎重がうえにも慎重を期す必要があることをどうかご理解ください。
世界的な流行、パンデミックと化した新型コロナウイルス感染症は、入学式を吹き飛ばしただけではありません。留学を途中で切り上げなくてはならなくなった学生がいます。外国の学生で本学への留学を諦めた学生もいます。サークル活動、合宿、演奏会、スポーツの競技会も中止になりました。授業開始も遅らさざるをえませんでした。皆さんの学生生活のスタートが台無しになってしまいそうです。
大学に学ぶ皆さんには、このたびの災厄を人類に与えられた壮大な問題解決型学習(PBL)として捉えて、そこからいろいろなことを学んでいただきたい。感染症の拡大や部品調達の停止からはグローバル化した現代世界の現実について、感染爆発からは治療薬やワクチンなどの開発について、医療崩壊からは医療・看護体制について、自国中心の政策対応からは国際協調のあり方について、外出・社会活動の制限要請からは自律、自由と統制の問題について、マスク、トイレットペーパー、食料品の買いだめ騒動からはパニック心理や利己的な消費行動について、工場・店舗の閉鎖による失業や収入減については社会保障や経営支援について。数え上げればきりがないくらい、研究すべき課題が見つかります。それぞれの立場から、感染症の流行が暴き出した課題について考えていただきたい。
パンデミックという非常事態に遭遇して、大学教育も大きく変わっていかざるをえません。全部の授業科目までは対応できませんが、少しずつインターネットを通じた遠隔授業を取り入れていきます。Webによる学生サービス支援システムである「ユニバーサル・パスポート」を用いて課題図書や演習問題に取り組む授業も増えることと思います。もちろんこれまでの座学中心の対面授業や実験、実習も引き続きおこなわれますが、授業のIT化は、予定以上の速さで進むものと思われます。予定された形でのガイダンスは行われませんが、ホームページや履修要項に目を通して、授業開始に十分に備えてください。

皆さんは令和へと元号が変わって初めて迎える入学生です。私は、令和という時代は、これまでの産業社会からつぎの文明社会へ動き出すのを、肌身に感じる時代になるだろうと予想しています。文明の過渡期の時代です。来るべき新時代を、Society 5.0と呼ぶことがあります。狩猟採取時代から数えて、5番目の文明社会と言う意味です。高度な情報通信技術によって支えられる時代になるものと予測されています。皮肉にも、新型コロナウイルス感染症の蔓延が、Society 5.0への移行を否応なく推し進めていると言えなくもありません。その過程において、生産技術の革新はもちろんのこと、家族や働き方などのさまざまな社会制度や慣習が大きく変化するでしょう。大きな混乱も予想されます。その中で、皆さんは時代の潮流に呑まれて右往左往することなく、知恵を絞り、他の人々と協力して、主体的な新しい時代の建設者になってください。
静岡県立大学は、昨年11月に「SDGs宣言」を掲げ、この4月1日から「静岡県立大学SDGsイニシアティブ」を立ち上げました。SDGsとは「持続可能な開発目標」のことで、2015年に国連サミットで採択されました。世界のすべての国が、平和で、公正で、誰一人取り残すことなく、豊かさを追求しながら、住みやすい地球環境を未来に残すことを目指しています。本学でも、教育、研究、地域貢献、大学運営とあらゆる側面でSDGsに取り組み、その理念に即して、地域をつくり、世界とむすび、未来へつなぐことを大学の使命としました。皆さんにも積極的にこの運動に参加していただきたいと願っています。
「学生は未来からの留学生」と言われます。皆さんは未来を創る主人公です。わたしたち教職員一同は、惜しみなく、皆さんを支援することを誓います。困難な状態からのスタートになりましたが、学生生活を満喫するとともに、勉学に励み、大きく将来へはばたく力を身につけてくださることを願っています。


静岡県立大学
静岡県立大学短期大学部
学長 鬼頭 宏

理事長祝辞

尾池和夫理事長

静岡県立大学648名・短期大学部121名および大学院115名、ご入学された皆さん誠におめでとうございます。皆さんは、この静岡県立大学をみずから選んで入学されました。静岡県公立大学法人の役員、大学の教職員とともに、選んでくださったことに感謝しつつ、皆さんの期待に応えるよう、精一杯の準備をして歓迎いたします。
ご家族の皆さまは、学習支援で見守ってこられ、今日の感激もひとしおであろうと思います。こころからお祝い申し上げるとともに、入学を機会に、これからは独立した社会人として見守ってあげていただきたいと思います。

皆さんが入学したこの大学は、静岡県民の力に支えられています。川勝平太静岡県知事はいつも、世界遺産の富士山のことや美しさと深さで知られる駿河湾のことなどを話題にします。皆さんも、この静岡県で学習される機会に、学生生活を謳歌するとともに、この気候温暖で、豊かな自然と美味しい食材に恵まれ、暮らしやすい静岡県での生活を、十分楽しんでいただき、卒業後はそれを世界へ伝えていただきたいと思っています。

伊豆国、駿河国、遠江国の3国が、1876年(明治9年)の合併で現在の静岡県となりました。今、静岡県は、県民所得が東京、愛知に次ぐ第三位の県です。観光名所では世界遺産の「富士山」をはじめ、遠江国分寺跡、新居関跡、登呂遺跡の3つの特別史跡があります。天然記念物の数も31個と多く、全国6位の数です。
県下には、縄文時代の遺跡約2000か所があり、約7000〜8000年前には愛鷹山南麓から箱根山西麓、伊豆半島にかけて集落が急増しました。約7500〜9500年前の三ヶ日人の住んでいた遺跡が発見されています。約4000〜6000年前のものとされる全国的に見ても大規模な集落跡、千居遺跡が静岡県東部、現富士宮市で確認されています。弥生時代の遺跡では、静岡市駿河区登呂で、弥生時代の水田、住居跡などが発見されている登呂遺跡が有名です。

今、新型コロナウイルスによる感染症が終息しない状況の中で、入学式も中止してのご挨拶ですが、時期が来れば大いに進めたい場所や企画があります。
「プラモデルの聖都」と言われる静岡市は、プラモデルの出荷額日本一、シェア9割近くを占める都市です。見本市「静岡ホビーショー」には世界からバイヤーがやって来ます。地場産業である木漆工芸が背景にあってこの産業が定着しています。教科の中でも「しずおか学」や地域・大学コンソーシアムの「ふじのくに学」というような地域への理解を深める目的の科目があります。江戸時代からの伝統である工芸から世界的なプラモデルに発展してきた静岡の工芸のことにも、日常生活の中で出会う機会を作って触れてみてほしいと思います。静岡市にあるバンダイホビーセンターは、ガンプラファンの聖地と呼ばれ、工場と事務所を兼ねたホビーセンターでは、土産売り場があり見学も可能です。

また、静岡県は2010年に健康寿命ランキングトップになり、2013年には「健康寿命をのばそう! アワード」厚生労働省最優秀賞を受賞しました。静岡県の健康寿命ランキングがトップクラスなのは「ふじのくに健康増進計画」が関係しているからです。本学でもこのようなことに深く関わる研究があります。
そして、静岡県は日本一のお茶の産地です。1世帯あたり緑茶消費量の全国平均は986グラム。最も消費量が多いのは茶どころ静岡県で1,901グラムで、これは全国平均の2倍近い消費量です。奈良や京都が上位に入っており、日本文化と緑茶は関係があるように思えます。
1位の静岡県と2位の京都府はともに多くのお茶を消費しているのですが、静岡県の緑茶購入費が10,899円なのに対し、京都府は5,192円と静岡の半分以下です。100gあたりの単価にしてみると静岡県が573円で京都府は311円。金額が高くてもこだわりのお茶を楽しむのが静岡県民だといえます。
県下さまざまなお茶に関する場所があります。学内でもお茶を楽しむ行事を企画しています。学外では、例えば藤枝市のお茶屋さんにジェラートで人気の店があります。明治40(1907)年創業の丸七製茶さんが経営する店舗で、作りたての抹茶ジェラートを味わうことできます。藤枝市は良質な抹茶の産地なのです。

更に静岡県は、地球を覆う大陸プレートの中でも最大級の二大プレートが出合い押し合っている場所であります。糸魚川-静岡構造線で、ほぼ南北に走るその構造線の東側に、フォッサマグナと呼ばれる地域があります。そこへ南から火山諸島が海洋プレートに運ばれて移動してきたのが今から100万年から60万年前です。新しい本州の一部となったこの場所が「伊豆半島ユネスコ世界ジオパーク」です。
中部山岳地帯の南端となる静岡市と焼津市の間にある大崩海岸では、中部山岳地帯の南端の切り立った崖が海底に落ち込む地形を見ることができます。

美しい海を持つ静岡県の特徴も大いに楽しんでほしいと思います。伊豆国立公園に指定されている石廊崎、小さな港町中木の境にある海岸、ヒリゾ浜は抜群の透明度を誇る海岸で、独特の地理的環境から船でしか行くことができませんが、崖に覆われ、そこには開発が行われていない美しい自然があり、シュノーケリングに絶好のポイントです。
海産物では、1世帯あたりマグロ消費量の全国平均は年間2,270g。最も多いのは静岡県で4,518gと全国平均の約2倍です。静岡県はマグロの水揚げが日本一で、名実ともに日本一のマグロ県と言えます。
清水港は、地球深部探査船「ちきゅう」の母港です。海洋研究開発機構(JAMSTEC)が南海トラフの巨大地震の解明に向けて、深海底を掘削し、科学掘削としては世界最深部となる岩石試料の採取に成功しています。

外出を自粛する時期にあたって、学習を深める機会だととらえ、さまざまなことを試みてほしいと思います。
学内の附属図書館では、新型コロナウイルス感染症対策のため、図書館への入館時には必ずマスクを着用していただくようお願いしています。また、ゲート前にアルコール消毒を用意いたしましたので、入館前に手指の消毒をお願いいたします。感染症対策のため中止するサービスもありますが、ご理解ください。また、本学公式サイト「図書館>情報リンク集」ページから外部のオンラインサービスを利用して学習を深めてください。
オンライン図書には、国立国会図書館デジタルコレクション、公文書館デジタルアーカイブ、日本ペンクラブ電子文藝館、青空文庫などさまざまなものがあり、大いに利用していただきたいと思います。
入学した大学のことを、授業からだけでなく、大いに探索してみてほしいと思います。静岡新聞では昨年から「静岡県立大発 まんが しずおかのDNA」というシリーズを毎週月曜日に掲載しています。2019年11月4日の第1回は「静岡の大地」という題で私が書きました。京都の漫画家である、加藤ひなさんが毎回漫画を添えてくれています。

新入生の皆さんにも、国連の提唱するSDGsのことをしっかり把握してほしいと思います。Sustainable Development Goalsのことです。2016年~2030年の15年間での達成を目標に掲げています。この大学のある静岡市は、SDGs未来都市・ハブ都市として「世界水準のまち」を目指しており、高い評価を得ています。静岡市で学生生活を送る中で、皆さんの1人ひとりが、このSDGsの目標を意識して、自らの未来の目標にしていただきたいと思います。
最後に本学の自慢の施設の一つを紹介します。草薙キャンパスの上の方に行くと本学の薬草園があります。最近では生薬を直接研究テーマとする研究者が減少していますが、この大学の薬用植物園は、薬学部の教育に必要な植物の栽培と収穫および研究を行うこと、さらには静岡県民および一般社会人に対して生涯教育の場を提供することを目的に設置され、活動しています。標本園3300平方メートル、栽培圃場2000平方メートル、温室90平方メートルなどに、栽培植物約800種があります。平日には一般にも開放しており、見本園、温室は見学自由です。見本園の植物には、植物名、学名、科名、薬局方などの名称、利用部位、利用目的、成分、産地、原産地が記されています。植物の中には猛毒のものもあるということも、そこで学んでほしいと思います。今、薬草園の桜、桃、朝鮮レンギョウなどが、皆さんを歓迎して咲いています。ホームページの今月の花の紹介などを見ながら、ときには大学内の見学コースに入れてみてほしいと思います。

皆さんは、静岡県というすばらしい環境の中で、これからの学生生活を大いに愉しんでほしいと思います。在学の期間はあっという間にすぎていきます。学習とともに大いに静岡県を歩いて、その魅力を世界に向かって発信する人となって卒業していただきたいと思っています。
心身の健康に充分留意され、学生生活を送ってくださるよう祈って、私のお祝いの言葉とします。
ありがとうございました。


静岡県公立大学法人理事長 尾池和夫


(2020年4月8日)

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